ゆうゆう自適。
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エクトル・ベルリオーズのオペラ「トロイアの人々」(Les Troyens)を観に行きました。
「トロイアの人々」は、ヴェルギリウスの『アエネーイス』を題材としたオペラ。全編通してフランス語なので若干の違和感はあるものの(そんなこと言ったら、以前観た「三文オペラ」の時点でアウトなのはわかっている)、筋は『アエネーイス』の1巻と4巻(トロイア戦争~カルタゴの女王ディードーの死)に非常に忠実な作品です。
全五幕からなるオペラで、もともとは第一部(第一幕・第二幕)と第二部(第三幕~第五幕)にわかれて上演されていたのだそうです。1969年以降、「完全版」として上演するのが常となっていますが、なにしろ「Two-in-One」の構造を持っているため、上演時間がかなり長い。途中で長めの休憩も入るので、全上演時間は5時間強。結構な体力勝負であります。
つい先日、ベルリン・ドイツ・オペラで初演を迎えたこの舞台、とても見応えがありました。
第一幕・第二幕の舞台は滅びゆくトロイア。
正直カッサンドラの演出(始終編みものをしながら、トロイアの行く先を嘆く。編んでいるのは馬のかたちをしたなにか?)がよくわからなかったのですが、カッサンドラを第一幕・第二幕の主役にしたのは面白い試みだと思います。『アエネーイス』は、生前のカッサンドラにとりたててスポットを当ててはいないので(後半部に黄泉の国で再会したときにもうちょっと取り上げられるくらい)。
なんだかんだでカッサンドラは修論で扱った題材なので、とても関心のある人物像なのだけれど、観劇中はヴォルフ版カッサンドラとごっちゃになってしまってちょっとややこしかった。「えー、カッサンドラって旦那さんとこんなに相思相愛だったっけ?」とか突っ込んではいけないんだろう。(しかもヴォルフ版はカッサンドラとアエネアスが恋仲であるという設定なので、更にややこしい)
伝承のカッサンドラはギリシア軍に捕えられ、アガメムノンの妾にされた挙句、アガメムノンともどもクリュタイムネストラに惨殺されるのですが、ベルリオーズのカッサンドラは「名誉を守るために」自ら命を断ちます。
相当ヴォルフ版を引きずっていますが、いつか、カッサンドラ表象についてなにかやってみたいなあとぼんやり思う。なにせ、未だに修論を精算しきれていないわけだし。
想像よりもややふくよかなカッサンドラでしたが(失礼)、歌はとても素晴らしかった!
第三幕~第五幕の舞台はカルタゴ。
ディードーとアエネイスの出会い、恋、そして別れ。
ディードーってアモルに矢を打たれてアエネイスに恋をした(させられた)のではなかったかな?(アエネアスの母・ヴェヌスの策略)ベルリオーズのディードーは、ごくふつうにアエネアスと恋に落ちた模様。
使命を全うするためにカルタゴを去るアエネアスを恨むディードーの鬼気迫る歌声に圧倒された。美人さんだったから、なおさら。
ヒロインの存在感がすごいので、アエネアスが霞みそうですが、彼はとても渋くて恰好よかった。
唯一残念なのは、「父アンキセスを背負ってトロイアから脱出するアエネアス」がまったく描かれていないこと!アンキセスなんて名前のみの登場です。おとやんどこに行ったの!まあ、カルタゴに着いた時点ではなくなっているので、登場させなくても筋に影響はないんだけれど……。
『アエネーイス』の1巻と4巻は高校のときに扱った作品で、思い入れもある。これらを舞台で観ることができて、大満足!
トロイア戦争といえばギリシア側から描かれた『イーリアス』『オデュッセイア』が有名ですが、トロイアサイドの物語に関心のあるかたは、『アエネーイス』を読んでみてはどうでしょう?全12巻ですが、おもしろどころは1巻・4巻・6巻なので(2・3・5巻はひたすら漂流中)、ここだけ読むのもアリだと思う。
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かれんだー
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日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。
深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。
2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。
ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。