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ゆうゆう自適。

つらつら、まったり。つれづれ(不定期)雑記帳。海風薫るロストックから伯林、そして再び東京へ。再びドイツへ「帰る」日を夢見て、今日も今日とてしゅぎょう中。
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ベルリーナ・アンサンブル(BE)でマックス・フリッシュの「アンドラ」を観てきた。

「アンドラ」は10年以上前に国語の授業で読んだけれど、当時の先生が好きになれなかった上にテクストを生理的に受けつけることができず、「トラウマの一冊」と化していた。フリッシュの作品自体に苦手意識を持つようになってしまって、『ホモ・ファーバー』『モントーク』を手に取ったのだってここ1、2年のはなし。

たまたまBEの上演プランに「アンドラ」の名前を発見し、いい機会だから観に行ってみるか……と軽い気持ちで観劇することに。


小国家、アンドラ。
青年アンドリは、ユダヤ人という理由で市民から差別を受けていた。

しかしアンドリはユダヤ人ではなく、アンドラ人の父と「黒き民の国」と呼ばれる隣国の女性との間にできた子だった。「黒い民」との関係が露見することを恐れた父は、アンドリを「瀕死のところを救ったユダヤ人」と称し、養子として引き取ることで世間を欺いていたのである。その事実を知らず、アンドリは「養父」の娘・バーブリーンと恋におちる。

ユダヤ人ではないのに、「だからユダヤ人は……」と差別を受けるアンドリ。
色欲、金銭欲、名誉欲。欲にとらわれたアンドラ人は、己のうちにある欲望から目をそむけ、アンドリを誹謗中傷する。
皆となにひとつ変わらないのに「おまえは違う」と異端の烙印を押され、バーブリーンとの結婚も父に反対されたアンドリは、ついに「ユダヤ人」としてのアイデンティティを受け入れるに至る。

隣国からやってきた実母は、アンドラ人に石を投げられ、殺されてしまう。
そして彼らは言う。「アンドリが石を投げるのを見た」と。

「ユダヤ人だから」ですべて片づけられてしまう現実に絶望したアンドリは、「黒き民」が進軍し、ユダヤ人の公開処刑を求めてきた際にも、抵抗ひとつしなかった。

父は首をつり、バーブリーンは正気を失う。
残されたアンドラの民は、口々に「自分は悪くなかった」と言い逃れをするのだった。


クラウス・パイマンの演出は非常にわかりやすかった。
ある種のかたよりはあるかもしれない、と思いながらも、圧倒されました。


「ひとと違う」ことに恐れ、
「皆と同じでありたい」がためにうそをつき、
そのうそが悲劇を呼ぶ。

偶像を造り上げることなかれ。
そう、フリッシュは言った。

アンドラ人は皆、アンドリをアンドリではなく、「ユダヤ人」としてしか認識せず、その上で勝手に「ユダヤ人」の像を造り上げていた。


「アンドラ」って、こんなに考えさせられる戯曲だったのか。
10年以上経って、再発見したような気分です。


俳優陣の演技が素晴らしかった。
明朗快活なアンドリの人格が、徐々に陰りを帯びていく過程に引き込まれる。

アンドラ人がそろいもそろって「いやなやつ」ばかりなのがまたすごい。
これもひとつの「偶像」なのだろうか……。


ようやく、「フリッシュ苦手意識」を払拭できたような気がする。
「アンドラ」を100%理解したとは到底いえないけれど、まず一歩。


10年以上経った今も、「アンドラ」はドイツの学校の課題図書なのか、中学生くらいの団体が目立ちました。
思春期モード全開!なイマドキの子たちで、あまりマナーがよろしくなかった……。

上演中に何度か携帯電話が鳴ったし、すぐ後ろに座っていたグループは音を立てて飲み食い、途中で飽きたのかひっきりなしにおしゃべり。

自分がそのくらいの年代のときに読んだから思うんだけれど、フリッシュは15歳前後の子が読んでもよくわからないんじゃないかなという気がしてならない。性的な場面で過剰に反応するのも、ティーンネージャーならでは。(わたしは嫌悪感を覚えたほう)


それにしても、公共の場で2時間黙っていられないのは大いに問題。
あんまり騒がしかったので、隣に座っていた温厚そうな老夫婦がキレました。
まったくもって正しい。

その老夫婦とちょっとおはなし。
アテネから旅行でベルリンに来ているのだそうな。

Deutsches Theaterの「お気に召すまま」を勧められた。
観てみたいけれど、どうやらもう上演していないみたいだ。残念。
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ドイツ生まれ、ドイツ育ちの「なんとなく日本人」。根っからのラインラントっこ。

日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。

深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。

2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。

ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。


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