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ゆうゆう自適。

つらつら、まったり。つれづれ(不定期)雑記帳。海風薫るロストックから伯林、そして再び東京へ。再びドイツへ「帰る」日を夢見て、今日も今日とてしゅぎょう中。
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ベルリナーレではじめて観た映画は、オーストリア映画。Die Vaterlosen(The Fatherless)、「父なきものたち」。
 
父の死に際して、散り散りになっていた子どもたちがかつての生家に集う。
ベルリンで医業を営むニキ、ウィーンで生活しているヴィート。20年前に母とともに家を追い出されたキューラは、唯一父のもとで暮らしていた異母妹ミッツィとはじめて顔を合わせる。
父はなにを思って、子どもたちを呼び寄せたのか――。真相を知る術を持たない子どもたちは、各々の思い出を語りはじめる。父はどのような人間だったのか。なぜ、キューラは父の元を去らねばならなかったのか。残されたものたちの想いが交錯したとき、20年前の真実が明らかになる。
 
(ここからネタバレ)
 
20年間、一度も顔を合わせたことのない姉妹、キューラとミッツィを軸に物語は進む。
 
かつて父・ハンスは自由な共同体を形成し、数人の男女とその子どもたちとともに暮らしていた。彼はふたりの女性と関係を持っていたが、共同体が機能しているうちは諍いも起こらない。しかし生まれたばかりのミッツィがキューラの不注意によって命を失いかけたことから、ミッツィの母は共同体を解体するようハンスに懇願する。結果、キューラは実母とともにハンスの家を追放されてしまう――。
 
子どもの目線で展開する回想を重ねていくうちに、少しずつ、ミッツィをめぐる過去が紐解かれていく。その過程で、秘密を抱えているのがキューラひとりだけではないこともわかってくる。
ニキとキューラ、そしてヴィートそれぞれの記憶が交錯してはじめて、事件の真相が明らかになる。
 
 
「父なきものたち」――このタイトルをどのように理解するか。
 
子どもたち4人のうち、誰ひとりとしてハンスを「お父さん」と呼びはしない。みな、「ハンス」と名前で呼ぶ。
共同体の中心的な存在であったハンスは、カリスマ的なリーダーであっても、子どもたちの父ではなかったのではないかと、おぼろげに思う。
 
家とともに、ハンスとともに、共同体の名残も朽ち果ててゆく。
かつての時間を取り戻そうと、躍起になって家を修復しようとするヴィート。
けれどほかのきょうだいたちや、妻でさえも、今やハンスの強力な呪縛から抜け出そうとしている。
 
父なき今、新しいなにかがはじまろうとしている。
そんな予感を抱かせるラスト。
 
(ここまでネタバレ)
 
 
まるで、小説を読んでいるような映画。
静かに、丁寧に、はなしが進んでいく。少しずつ、謎が解けていく。
 
そしてまた、深い余韻を残す映画でもある。
 
オーストリア・ドイツ語が耳に心地よい作品でした。
でもスイス・ドイツ語ほどではないとはいえ、字幕がないとやっぱりツライ。早口&ばりばりのオーストリアっこのしゃべりはさっぱり。ドイツ語圏とはいえ、これは方言というレベルではなく、もう立派な言語だなよあ……。
 
Die Vaterlosen」は4月にオーストリア、6月にドイツで公開予定とのこと。
味わいのある、いい作品だと思うので、関心のある方はぜひ。オーストリアものは日本に来るかどうかわからないし、今のうちに観ておいてよかった!
 
あ、でも、「Die Herbstzeitlosen」(邦題は『マルタのやさしい刺繍』だったかな……)も小さな劇場で公開されたし、特別上映でもいいから実現してほしいなあ。
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ドイツ生まれ、ドイツ育ちの「なんとなく日本人」。根っからのラインラントっこ。

日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。

深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。

2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。

ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。


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