ゆうゆう自適。
つらつら、まったり。つれづれ(不定期)雑記帳。海風薫るロストックから伯林、そして再び東京へ。再びドイツへ「帰る」日を夢見て、今日も今日とてしゅぎょう中。
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クリスタ・ヴォルフの朗読会を兼ねた新刊お披露目が行われるということで、行ってきました、ベルリン。
ゼミに出てから電車に飛び乗って、2時間半。
メクレンブルクから、ベルリンへ。旧東ドイツから、西ドイツへ。
つい2か月前、ここからロストックへ出発した。
その「はじまりの場所」に、今、また立っている。なんだか不思議な感じ。
ドイツで人口70万を超える街に住んだことのない自分にとって、その5倍の人口を誇るベルリンは大都会!そして今日は、人口20万のロストックからやってきた。完全に「おのぼりさん」モードです。
駅ナカあるよ!いろんな言語が聞こえるよ!観光客たくさんだよ!……と、最初に訪れたときには特に気にしなかった事柄に、逐一反応してしまう。こんな駅、ドイツでほかに見たことない。そういえば、7年前に観光で来たときは、まだ完成していなかったんだよなあ。
ベルリン在住の友人と中央駅で待ち合わせをして、まず、朗読会の会場である芸術アカデミーに予約したチケットを取りに行く。
路線図を見て、「(地下鉄の駅はここで、この駅に一番近いSバーンの駅はここだから、)この駅で降りればいいと思う!」とカンで主張したら、見事に外れて初っ端から友人に迷惑をかけるはめになる。あー、路線図上、地下鉄と普通電車(Sバーン)の駅が近そうに見えても、実際そうとは限らないってことね。(冷静に考えてみれば、東京のJR・メトロ・都営の路線だって似たようなものじゃないか!ばか自分!)いかん、感覚がロストック基準になってる……!
芸術アカデミーで無事チケットを受け取る。電話で名前を伝えただけだったから、本当に確保してもらえているのか心配だったけれど、まったく問題なかった。
そのまま、併設されている書店のブースをのぞいてみる。なんと、来週発売のヴォルフの新刊が並んでいるではないですか!「この本は購入可能ですか?」と思わず確認してしまった。もちろん、ということだったので、その場で即購入。ふう、先走ってアマゾンで予約しなくてよかった!
その後は、ホテルに行ってチェック・イン。ベルリン・エキスパートがいてくれたおかげで、スムーズに到着。うーん、ベルリン歴6、7年の彼には到底及ばないだろうけれど、半年ほど暮らしたらちょっとは詳しくなれるんだろうか?どうもロストック市内みたいにさくっと移動できるような気がしないんだよねえ。(まあ、東京に7、8年住んでいたって隅々まで詳しくなるわけじゃないしね……)
友人とシュパーゲル(白アスパラ)ディナーをして、いざ、朗読会へ。
かなりぎりぎりの到着になってしまって、もはやステージ後ろの席しか残っておらず。むむ。でも、クリスタ・ヴォルフ本人がステージに登場するところは見えたし、スクリーンも設置されていたので、きちんと彼女の姿を拝見することはできました。杖をついて歩く彼女を見て、今更ながら彼女が高齢であることを実感した。そうだ。81歳になったんだものね。
ヴォルフがこちらに背中を向けて話しているのは当然の結果だけれど(開始前に後ろを振り返って謝罪をしていた。気配り!)、進行を務める作家、インゴ・シュルツェがなぜか始終ほぼ正面から見えていて、なんだか奇妙な感じ。
おなかに深く響く、よく通る声で新作を朗読するヴォルフ。張りのある声。
声や、トークの調子を聞いただけでは、とても80を超えたおばあちゃんとは思えないパワフルさ。さすがです。貫禄ある。
新作はヴォルフの自伝的小説。彼女が1993年から94年にかけて、ロサンゼルスで生活していたころのはなし。ちょうどヴォルフのシュタージへの関与が明らかになった直後のことで、「半ば逃げるようにドイツを去った」とのこと。
そんな重苦しいテーマを扱った本なものだから、えっ、そこで!? と思うようなところで会場がわっと湧いたりしたときは、ちょっとびっくりした。たしかにくすっとなるエピソードもあったけれど、ほとんど笑いを共有できなかったな……うーん、わかるひとはわかるの?
ただ、今回朗読された断片を聞いた限りでは、重苦しいだけのはなしではなさそうなので、全編通して読むのを楽しみにしたいと思います。
朗読会終了後、なんとサイン会が開かれることに!事前に購入した新刊を持ってきたので、すかさず列に並んでヴォルフ待ち。
なにか話したらいいんだろうか、あああ、でも、なにを話したらいいんだろう、わああ!と内心ひとりで騒いでいる間に順番が回ってきてしまい、結局本人を前にして「ありがとうございました」のひとことしか言えず。もう、このへたれめ!
でも、にこっと笑いかけてくれたよ。ああ、わたしこの人の作品で論文を書いたんだな……と思うと、とても感慨深い。
いやあ、ベルリン悔いなし。
一日目だけでそう思った。
翌日は、午後に入っていたゼミが急遽休講になったので、ゆっくりしてから帰ることに。
当初は朝一番で帰るつもりだったので、まったく予定が立っていない。せっかくだから、自分に関係がありそうなところに行くか!ということで、2006年に開館されたばかりのDDR(旧東ドイツ)博物館と、シュタージ博物館に行ってきました。
DDR博物館は、「旧東ドイツの生活を体験してみよう!」という体感型の博物館。ベルリン大聖堂の向かい側にあります。
トラバントに乗ってみたり(運転シミュレーションもできるらしい)、FDJ(自由ドイツ青年団)の制服を見たり、西ドイツ・東ドイツのジーンズを見比べたり。旧東ドイツの生活をあちらこちらで垣間見れる作りになっています。
旧東ドイツで放映されていたテレビ番組を視聴することもできて、なんとロストックの都市計画について紹介するドキュメンタリもありました。これはタイムリー!景色や地名がわかると、俄然おもしろくなる。
しかし、しかし、
旧東ドイツではヌーディズム文化が盛んだったんだよ!というはなしは、ちょっと意外でびっくりした。むしろ国の性質的にアウトなんじゃないの?と思いきや、「自由と平等の象徴」として、ヌーディズムを認めさせようとする運動が徐々に高まっていったのだそうです。なるほど。
開館直後に行ったにもかかわらず、遠足(あるいは修学旅行)のグループとはち合わせて、館内を回るのが少し大変だった。ガイドが、なかなか動かない。……すごく丁寧に説明しているのはわかるんだけれど、いつまで経っても目的のパネルが見られないのはちょっとツライ。
大聖堂の横手に出て、そのままアレクサンダー広場を目指す。
途中でアンペルマン・ショップを冷やかしたり、赤の市庁舎を一目見たり。『舞姫』の舞台になったというマリエン教会は、7年前に訪れたときには工事中だったけれど、外観の工事は完了していました!なので、記念の写真をぱちり。
ふふふ、この7年の間にちゃんと読みましたよ、『舞姫』。今回こそは「この教会でエリスが……」と言える!(当然ながら威張れたことではない)
手元にあるドイツ語のガイドブックによると、シュタージ博物館は「カール・マルクス通りをひたすらまっすぐ歩いて」いけば着くらしい。大層アバウトな説明だけれど、だいじょうぶなのか。
とりあえず指定の駅を降りて、アレクサンダー広場とは真逆の方向に歩いてみる。そういえば、ここは旧東ドイツの地区ではないか。しかも、スターリン時代につくられた建物が並ぶ、かつての「スターリン通り」!ああ、この「角砂糖」みたいな建物群は、ロストックのLange Strasseで見られるものとおんなじ!(ただしロストックの場合は景観を損なわないよう、角砂糖スタイルの建物にハンザ風のアレンジが施されている)
そのままてけてけ歩いてみる。シュタージ博物館は一向に見えてこないけれど、その代わりに、どこか見覚えのある建物が目に飛び込んできた。
う、あ、こ、この本屋さん!映画『善き人のためのソナタ』で、ヴィースラーがドライマンの本を買った本屋さんじゃない!? えええ、この通りにあったの?これは嬉しい誤算だ……。
ちょっとのぞいて見ようかな、と思ったけれど、一般の書店というよりは出版社みたいな感じでやや入りづらかったので、外から見るだけ。映画の中の本屋さんとは内装も違うし、セット用に変えたのか、それともあとから変わったのか……。
その後も歩く、歩く。やっぱりいつまで経っても、一向にたどり着く気配がない。
3駅歩いてようやく「なにかがおかしい」と思いはじめ、図書館で借りてきた別のガイドブックを開く。詳細な地図でチェックすると、シュタージ博物館はたしかにこの通りの延長にはあるものの、更に3駅先にあった。
………
最初のガイドブックの説明通りに歩いていたら、一時間、ひたすら歩くことになりかねなかった……。ああもう、なんなの、あの不親切設計!? せめて最寄り駅くらいカッコつきで書いたっていいじゃないか、と思う。(ちゃんと事前に確認しなかった自分にも落ち度はあるんだけどさあ)
気を取り直して地下鉄に乗って、シュタージ博物館へ。
ここでも建物群の案内がわかりづらくて散々迷った。ベルリンを散策するときは時間に余裕を持っていかないとかなりマズイ、そんな気がする。
ロストックもそうだったんだけれど、シュタージ関係の建物は、もう外観からして負のオーラを放っているような気がする。パンフレットに載っている写真は曇天で、狙っているんじゃないかと思うくらいに(いや、恐らく狙っているんだと思うけれど)おどろおどろしい。
ほんとにここ?と一瞬入るのをためらったけれど、入口に小さく「シュタージ博物館」と書いてあったので、思い切って入ってみる。
「ここのパネルは全部ドイツ語だけどだいじょうぶ?あなたドイツ語できるわね?」と、受付のおばちゃんに念を押された。ふむ、「観光客向け」の博物館ではないのね。どちらかというと、資料館に近いんだろうな。
ここでも学生の団体とばったり。この博物館はいくつもの小部屋に分かれているので、ガイドが学生と一緒に一室に入ってしまうと、それだけで出入りが非常に困難になる。いくつか順番を無視して、先回りする必要があった。パネルを読むのに時間がかかる分、DDR博物館以上にツライ。
興味深かったのは、盗聴器・盗撮器のコーナー。
石のイミテーションに盗聴器を仕込んで道端に置いた、というのは序の口。木の幹に仕込んだり、トラックにこっそり隠したり、電柱に埋め込んだりと、もう、あの手この手です。じょうろの中とか、聖書のページの間(!)とか、そのクリエイティヴな発想に脱帽。そりゃあ、一般市民も気がつかないはずだ。
シュタージのオフィスも公開されていて、こちらは『善き人のためのソナタ』でも使われたのだそう。どこかで見たことあるなあとは思っていたけれど、気がついたのはあとになってから。いやあ、びっくりした。
パネルを読んで、当時の資料のコピーを拝見して、写真も見て、あっという間に時間がすぎた。情報量が膨大すぎて、ほんの1時間ちょっとじゃ全然足りない。うーん、ブッデンブローク・ハウスみたいにパネル情報の収まったパンフレットがあればいいのに。贅沢?
ベルリン市内を移動するという感覚がまったくわからず、友人との待ち合わせに30分以上遅刻した。感覚がロストック基準に(以下略)
ほんとうにごめんなさい。
無事友人と合流して、ベルリン自由大学のキャンパスを案内してもらいました。図書館がすごい!ヨーンゾン関係の本もたくさん入っていたし、絶版になっている本もあった(それも2冊も!)。さすがベルリン。
古本屋のコーナーでは、ヨーンゾン愛読者というおじさんを紹介してもらった。
本人いわく、ゲルマニストではない……とのことだけれど、ものすごくヨーンゾンを読み込んでいて、お話していてすごく楽しかった。いつぼろが出やしないかとヒヤヒヤもしたけれど、ヨーンゾンの講義やゼミに出たり、メクレンブルク内をぐるぐるした甲斐もあって、どうにかこうにか渡り合えた気がする!ドイツに来る前の自分だったら、確実に無理だった。
まだまだ足りないけれど、ちょっとずつ、蓄積されているんだろうか。
往復5時間、滞在25時間。
とてもとても濃厚な「遠足」でした。
行くか行くまいか迷ったけれど、来てよかった。本当によかった。
ゼミに出てから電車に飛び乗って、2時間半。
メクレンブルクから、ベルリンへ。旧東ドイツから、西ドイツへ。
つい2か月前、ここからロストックへ出発した。
その「はじまりの場所」に、今、また立っている。なんだか不思議な感じ。
駅ナカあるよ!いろんな言語が聞こえるよ!観光客たくさんだよ!……と、最初に訪れたときには特に気にしなかった事柄に、逐一反応してしまう。こんな駅、ドイツでほかに見たことない。そういえば、7年前に観光で来たときは、まだ完成していなかったんだよなあ。
ベルリン在住の友人と中央駅で待ち合わせをして、まず、朗読会の会場である芸術アカデミーに予約したチケットを取りに行く。
路線図を見て、「(地下鉄の駅はここで、この駅に一番近いSバーンの駅はここだから、)この駅で降りればいいと思う!」とカンで主張したら、見事に外れて初っ端から友人に迷惑をかけるはめになる。あー、路線図上、地下鉄と普通電車(Sバーン)の駅が近そうに見えても、実際そうとは限らないってことね。(冷静に考えてみれば、東京のJR・メトロ・都営の路線だって似たようなものじゃないか!ばか自分!)いかん、感覚がロストック基準になってる……!
芸術アカデミーで無事チケットを受け取る。電話で名前を伝えただけだったから、本当に確保してもらえているのか心配だったけれど、まったく問題なかった。
そのまま、併設されている書店のブースをのぞいてみる。なんと、来週発売のヴォルフの新刊が並んでいるではないですか!「この本は購入可能ですか?」と思わず確認してしまった。もちろん、ということだったので、その場で即購入。ふう、先走ってアマゾンで予約しなくてよかった!
その後は、ホテルに行ってチェック・イン。ベルリン・エキスパートがいてくれたおかげで、スムーズに到着。うーん、ベルリン歴6、7年の彼には到底及ばないだろうけれど、半年ほど暮らしたらちょっとは詳しくなれるんだろうか?どうもロストック市内みたいにさくっと移動できるような気がしないんだよねえ。(まあ、東京に7、8年住んでいたって隅々まで詳しくなるわけじゃないしね……)
友人とシュパーゲル(白アスパラ)ディナーをして、いざ、朗読会へ。
かなりぎりぎりの到着になってしまって、もはやステージ後ろの席しか残っておらず。むむ。でも、クリスタ・ヴォルフ本人がステージに登場するところは見えたし、スクリーンも設置されていたので、きちんと彼女の姿を拝見することはできました。杖をついて歩く彼女を見て、今更ながら彼女が高齢であることを実感した。そうだ。81歳になったんだものね。
ヴォルフがこちらに背中を向けて話しているのは当然の結果だけれど(開始前に後ろを振り返って謝罪をしていた。気配り!)、進行を務める作家、インゴ・シュルツェがなぜか始終ほぼ正面から見えていて、なんだか奇妙な感じ。
おなかに深く響く、よく通る声で新作を朗読するヴォルフ。張りのある声。
声や、トークの調子を聞いただけでは、とても80を超えたおばあちゃんとは思えないパワフルさ。さすがです。貫禄ある。
新作はヴォルフの自伝的小説。彼女が1993年から94年にかけて、ロサンゼルスで生活していたころのはなし。ちょうどヴォルフのシュタージへの関与が明らかになった直後のことで、「半ば逃げるようにドイツを去った」とのこと。
そんな重苦しいテーマを扱った本なものだから、えっ、そこで!? と思うようなところで会場がわっと湧いたりしたときは、ちょっとびっくりした。たしかにくすっとなるエピソードもあったけれど、ほとんど笑いを共有できなかったな……うーん、わかるひとはわかるの?
ただ、今回朗読された断片を聞いた限りでは、重苦しいだけのはなしではなさそうなので、全編通して読むのを楽しみにしたいと思います。
朗読会終了後、なんとサイン会が開かれることに!事前に購入した新刊を持ってきたので、すかさず列に並んでヴォルフ待ち。
なにか話したらいいんだろうか、あああ、でも、なにを話したらいいんだろう、わああ!と内心ひとりで騒いでいる間に順番が回ってきてしまい、結局本人を前にして「ありがとうございました」のひとことしか言えず。もう、このへたれめ!
でも、にこっと笑いかけてくれたよ。ああ、わたしこの人の作品で論文を書いたんだな……と思うと、とても感慨深い。
いやあ、ベルリン悔いなし。
一日目だけでそう思った。
当初は朝一番で帰るつもりだったので、まったく予定が立っていない。せっかくだから、自分に関係がありそうなところに行くか!ということで、2006年に開館されたばかりのDDR(旧東ドイツ)博物館と、シュタージ博物館に行ってきました。
DDR博物館は、「旧東ドイツの生活を体験してみよう!」という体感型の博物館。ベルリン大聖堂の向かい側にあります。
トラバントに乗ってみたり(運転シミュレーションもできるらしい)、FDJ(自由ドイツ青年団)の制服を見たり、西ドイツ・東ドイツのジーンズを見比べたり。旧東ドイツの生活をあちらこちらで垣間見れる作りになっています。
旧東ドイツで放映されていたテレビ番組を視聴することもできて、なんとロストックの都市計画について紹介するドキュメンタリもありました。これはタイムリー!景色や地名がわかると、俄然おもしろくなる。
しかし、しかし、
旧東ドイツではヌーディズム文化が盛んだったんだよ!というはなしは、ちょっと意外でびっくりした。むしろ国の性質的にアウトなんじゃないの?と思いきや、「自由と平等の象徴」として、ヌーディズムを認めさせようとする運動が徐々に高まっていったのだそうです。なるほど。
開館直後に行ったにもかかわらず、遠足(あるいは修学旅行)のグループとはち合わせて、館内を回るのが少し大変だった。ガイドが、なかなか動かない。……すごく丁寧に説明しているのはわかるんだけれど、いつまで経っても目的のパネルが見られないのはちょっとツライ。
途中でアンペルマン・ショップを冷やかしたり、赤の市庁舎を一目見たり。『舞姫』の舞台になったというマリエン教会は、7年前に訪れたときには工事中だったけれど、外観の工事は完了していました!なので、記念の写真をぱちり。
ふふふ、この7年の間にちゃんと読みましたよ、『舞姫』。今回こそは「この教会でエリスが……」と言える!(当然ながら威張れたことではない)
手元にあるドイツ語のガイドブックによると、シュタージ博物館は「カール・マルクス通りをひたすらまっすぐ歩いて」いけば着くらしい。大層アバウトな説明だけれど、だいじょうぶなのか。
う、あ、こ、この本屋さん!映画『善き人のためのソナタ』で、ヴィースラーがドライマンの本を買った本屋さんじゃない!? えええ、この通りにあったの?これは嬉しい誤算だ……。
ちょっとのぞいて見ようかな、と思ったけれど、一般の書店というよりは出版社みたいな感じでやや入りづらかったので、外から見るだけ。映画の中の本屋さんとは内装も違うし、セット用に変えたのか、それともあとから変わったのか……。
その後も歩く、歩く。やっぱりいつまで経っても、一向にたどり着く気配がない。
3駅歩いてようやく「なにかがおかしい」と思いはじめ、図書館で借りてきた別のガイドブックを開く。詳細な地図でチェックすると、シュタージ博物館はたしかにこの通りの延長にはあるものの、更に3駅先にあった。
………
最初のガイドブックの説明通りに歩いていたら、一時間、ひたすら歩くことになりかねなかった……。ああもう、なんなの、あの不親切設計!? せめて最寄り駅くらいカッコつきで書いたっていいじゃないか、と思う。(ちゃんと事前に確認しなかった自分にも落ち度はあるんだけどさあ)
ここでも建物群の案内がわかりづらくて散々迷った。ベルリンを散策するときは時間に余裕を持っていかないとかなりマズイ、そんな気がする。
ロストックもそうだったんだけれど、シュタージ関係の建物は、もう外観からして負のオーラを放っているような気がする。パンフレットに載っている写真は曇天で、狙っているんじゃないかと思うくらいに(いや、恐らく狙っているんだと思うけれど)おどろおどろしい。
ほんとにここ?と一瞬入るのをためらったけれど、入口に小さく「シュタージ博物館」と書いてあったので、思い切って入ってみる。
「ここのパネルは全部ドイツ語だけどだいじょうぶ?あなたドイツ語できるわね?」と、受付のおばちゃんに念を押された。ふむ、「観光客向け」の博物館ではないのね。どちらかというと、資料館に近いんだろうな。
ここでも学生の団体とばったり。この博物館はいくつもの小部屋に分かれているので、ガイドが学生と一緒に一室に入ってしまうと、それだけで出入りが非常に困難になる。いくつか順番を無視して、先回りする必要があった。パネルを読むのに時間がかかる分、DDR博物館以上にツライ。
興味深かったのは、盗聴器・盗撮器のコーナー。
石のイミテーションに盗聴器を仕込んで道端に置いた、というのは序の口。木の幹に仕込んだり、トラックにこっそり隠したり、電柱に埋め込んだりと、もう、あの手この手です。じょうろの中とか、聖書のページの間(!)とか、そのクリエイティヴな発想に脱帽。そりゃあ、一般市民も気がつかないはずだ。
シュタージのオフィスも公開されていて、こちらは『善き人のためのソナタ』でも使われたのだそう。どこかで見たことあるなあとは思っていたけれど、気がついたのはあとになってから。いやあ、びっくりした。
パネルを読んで、当時の資料のコピーを拝見して、写真も見て、あっという間に時間がすぎた。情報量が膨大すぎて、ほんの1時間ちょっとじゃ全然足りない。うーん、ブッデンブローク・ハウスみたいにパネル情報の収まったパンフレットがあればいいのに。贅沢?
ベルリン市内を移動するという感覚がまったくわからず、友人との待ち合わせに30分以上遅刻した。感覚がロストック基準に(以下略)
ほんとうにごめんなさい。
無事友人と合流して、ベルリン自由大学のキャンパスを案内してもらいました。図書館がすごい!ヨーンゾン関係の本もたくさん入っていたし、絶版になっている本もあった(それも2冊も!)。さすがベルリン。
古本屋のコーナーでは、ヨーンゾン愛読者というおじさんを紹介してもらった。
本人いわく、ゲルマニストではない……とのことだけれど、ものすごくヨーンゾンを読み込んでいて、お話していてすごく楽しかった。いつぼろが出やしないかとヒヤヒヤもしたけれど、ヨーンゾンの講義やゼミに出たり、メクレンブルク内をぐるぐるした甲斐もあって、どうにかこうにか渡り合えた気がする!ドイツに来る前の自分だったら、確実に無理だった。
まだまだ足りないけれど、ちょっとずつ、蓄積されているんだろうか。
往復5時間、滞在25時間。
とてもとても濃厚な「遠足」でした。
行くか行くまいか迷ったけれど、来てよかった。本当によかった。
夕方の電車でロストックへ「帰る」。
10分遅れてベルリンを発ったのに、それでも定刻通りロストックに到着するなんて、どんな魔法を使ったのDB。
ロストックの夜は、今日も静か。
ほんの一晩、留守にしていただけなのに、無性になつかしい。
帰ってきたよ。
ただいま。
いつの間にかロストックが、「わたしの街」になっている。
ベルリンはわくわくする街だけれど、
それは、とてもとても魅力的な街だけれど、
今はもう少し、ここにいたい。
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ドイツ生まれ、ドイツ育ちの「なんとなく日本人」。根っからのラインラントっこ。
日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。
深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。
2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。
ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。
日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。
深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。
2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。
ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。