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ゆうゆう自適。

つらつら、まったり。つれづれ(不定期)雑記帳。海風薫るロストックから伯林、そして再び東京へ。再びドイツへ「帰る」日を夢見て、今日も今日とてしゅぎょう中。
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原題「Osmdesát dopisu」。
何度聞いても、正しく発音できる気がしない……。
 
 
チェコスロヴァキア、1987年。
 
ある朝目覚めると、母がいなくなっていた。
少年ヴァチェクはあわてて家を飛び出し、母の後を追う。
母は、出国手続きの書類をそろえるために奔走していた。ヴァチェクとふたり、先にイギリスに亡命した父と再会するために。
 
とても淡々とした映画。
 
開始直前に、監督が「英字幕だけれど、台詞はほとんどないから安心してね!」と言って劇場全体を笑わせたものですが、本当に最低限の台詞しかなかった。音楽も、ほとんど流れない。代わりに空間を埋め尽くすのは雑踏、車のエンジン音、足音……。街並みはどこまでも灰色で、救いが感じられない。
 
出国手続きに必要な書類は一日で集めなければならず、揃わなければその日一日の努力が水の泡になってしまうのだそうです。そのため、母と息子は手続きのために一日中、街を駆け巡る。
当時のチェコスロヴァキアでは、苦労して書類を集めてもなかなか出国許可が下りなかったそうです。それでも、母はあきらめない。家に戻って、一息ついて、次の動きに備える……。
 
時折オフで、お母さんがお父さん宛てに書いた手紙の内容が流れる。すでに書かれた手紙は、43通。ラストに読まれる手紙で、44通目。家族3人が再会できるまで、あと何通の手紙が書かれることになるのか――。
 
この映画は、監督の自伝的な作品なのだそうです。
子どものころに残った印象や記憶をもとに、映画が構成されているとのこと。ところどころ、家族の写真がさりげなく織り込まれていたりもする。
Eigthy Letters、80通の手紙。母が80通目の手紙を書き終えたとき、ようやく出国の許可が下りたのだそうです。1年半後の、1988年。条件は、チェコスロヴァキアの国籍を破棄すること。
 
当時のチェコスロヴァキアってこんな感じだったのか……と、胸に迫るものがあった。
わたしはソビエトの体制を体験していないし、この映画を観てわかった気になったとは到底思えないけれど、当時の雰囲気を、監督が表現したかった世界を、ちょっとだけでも感じ取れたように思う。
 
灰色です。救いがないです。
それでも、母はあきらめない。
 
凛とした母の書く手紙が、一筋の光を投げかける。
華やかではないけれど、とても印象に残った映画でした。
 
 
ヴァチェクは可愛かったし、お母さんは美人。
なんと、演じたふたりの本業は役者ではなく、ミュージシャンなのだとか。
 
舞台あいさつもあり、映画館を出る直前に、ヴァチェク役の子のそばを通りました。実物もやはり可愛い……美少年!眼福です。うふふ。
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ベルリナーレではじめて観た映画は、オーストリア映画。Die Vaterlosen(The Fatherless)、「父なきものたち」。
 
父の死に際して、散り散りになっていた子どもたちがかつての生家に集う。
ベルリンで医業を営むニキ、ウィーンで生活しているヴィート。20年前に母とともに家を追い出されたキューラは、唯一父のもとで暮らしていた異母妹ミッツィとはじめて顔を合わせる。
父はなにを思って、子どもたちを呼び寄せたのか――。真相を知る術を持たない子どもたちは、各々の思い出を語りはじめる。父はどのような人間だったのか。なぜ、キューラは父の元を去らねばならなかったのか。残されたものたちの想いが交錯したとき、20年前の真実が明らかになる。
 
(ここからネタバレ)
 
20年間、一度も顔を合わせたことのない姉妹、キューラとミッツィを軸に物語は進む。
 
かつて父・ハンスは自由な共同体を形成し、数人の男女とその子どもたちとともに暮らしていた。彼はふたりの女性と関係を持っていたが、共同体が機能しているうちは諍いも起こらない。しかし生まれたばかりのミッツィがキューラの不注意によって命を失いかけたことから、ミッツィの母は共同体を解体するようハンスに懇願する。結果、キューラは実母とともにハンスの家を追放されてしまう――。
 
子どもの目線で展開する回想を重ねていくうちに、少しずつ、ミッツィをめぐる過去が紐解かれていく。その過程で、秘密を抱えているのがキューラひとりだけではないこともわかってくる。
ニキとキューラ、そしてヴィートそれぞれの記憶が交錯してはじめて、事件の真相が明らかになる。
 
 
「父なきものたち」――このタイトルをどのように理解するか。
 
子どもたち4人のうち、誰ひとりとしてハンスを「お父さん」と呼びはしない。みな、「ハンス」と名前で呼ぶ。
共同体の中心的な存在であったハンスは、カリスマ的なリーダーであっても、子どもたちの父ではなかったのではないかと、おぼろげに思う。
 
家とともに、ハンスとともに、共同体の名残も朽ち果ててゆく。
かつての時間を取り戻そうと、躍起になって家を修復しようとするヴィート。
けれどほかのきょうだいたちや、妻でさえも、今やハンスの強力な呪縛から抜け出そうとしている。
 
父なき今、新しいなにかがはじまろうとしている。
そんな予感を抱かせるラスト。
 
(ここまでネタバレ)
 
 
まるで、小説を読んでいるような映画。
静かに、丁寧に、はなしが進んでいく。少しずつ、謎が解けていく。
 
そしてまた、深い余韻を残す映画でもある。
 
オーストリア・ドイツ語が耳に心地よい作品でした。
でもスイス・ドイツ語ほどではないとはいえ、字幕がないとやっぱりツライ。早口&ばりばりのオーストリアっこのしゃべりはさっぱり。ドイツ語圏とはいえ、これは方言というレベルではなく、もう立派な言語だなよあ……。
 
Die Vaterlosen」は4月にオーストリア、6月にドイツで公開予定とのこと。
味わいのある、いい作品だと思うので、関心のある方はぜひ。オーストリアものは日本に来るかどうかわからないし、今のうちに観ておいてよかった!
 
あ、でも、「Die Herbstzeitlosen」(邦題は『マルタのやさしい刺繍』だったかな……)も小さな劇場で公開されたし、特別上映でもいいから実現してほしいなあ。

2月10日から20日までの11日間、ベルリンでは第61回ベルリン国際映画祭(ベルリナーレ)が開催されています。

直前にパンフレットを入手したものの、情報量が多すぎて、なかなか目を通せずにいました。
すでに折り返し地点に来ていますが、せっかくだから今しか観られない映画が観たい!ということで、今更ながらベルリナーレに参戦することに。

前売り券はオンラインでも購入できるのですが、もともと枚数が少ないので、人気作品は開始と同時に瞬く間に完売。成す術もない……。

仕方がないので、Potzdamer Platzにある公式チケット・カウンター(先行販売)に行くことに。
友達に「一時間半くらい並ぶのは覚悟したほうがいい」と言われていたけれど、朝9時半の時点ですでに長蛇の列が!友達も一緒に並んでくれたおかげで、ほとんど苦痛ではなかったのが幸い。これはベルリンっこに「なんなの?ばかなの?」と言われても反論できない。うん。

Wim Wendersの「PINA」や、Moritz Bleibtreu主演の「Mein bester Feind」(My Best Enemy)が観たいなあ、と思っていたけれど、すでに先行販売も完売。でもこの2作は近日中に一般公開を迎えることが決まっているので、それほどダメージは大きくない。(プレミアム上映に参加したい場合は別)
チケットの残数が表示されているモニタをチェックし、金曜夕方の「Toast」のチケットが十分残っていることがわかったので、これのチケットを買うことに決定。

そして、

カウンターで「あのモニタ実は更新されていなくて、『Toast』はさっき完売しました」と聞かされたときは「わたしの2時間を返して!」と本気で思った。

このまま引き下がるのもなんだかくやしいので、その場の勢いで金曜夜の「Submarine」を購入。イギリスの映画。青春ものらしい。どうでもいいけれど、この映画を観ると決めてからビートルズの「Yellow Submarine」が頭から離れない。

でも2時間並んだのはまったくの無駄でもなく、収穫もちょっとはあった。

朝一番(9時半)の映画は(コンペティション部門でも)観に行くひとが少ないのか、チケットが結構残っている。これは先行販売ではなく、早めに行って当日券を買ったほうがよさそう。(当日券だと学割が適用されるので、チケット代が半額になる)
ついでに、明日観に行く予定のチェコ映画のチケット残数もチェック。余裕。これもお昼上映だし、直接行ってもどうにかなりそう……。


このあと友達に行ったことのないメンザ(穴場!)に連れて行ってもらい、お昼を食べてから解散。
これからオーストリア映画を観に行きます。レビューは別エントリにて。

ノルウェー料理を食べに行ってきました。

Munch's Hus、「ムンクの家」。
ドイツで最初にして唯一のノルウェー料理レストランなのだそうです。

なんと、ドイツにはノルウェー料理レストランは一軒しかないのか!ということで、なんとなく行ってみることになった「ムンクの家」。
その前に、ノルウェー料理とはどんな料理なのだろう。事前にネットでメニューを見たのだけれど、「さかながおいしそう」「肉料理もあるのね」と思うのが限界。想像力が貧困でごめんなさい。


お店は結構盛況で、カウンター席のみが空いていた。
特に問題もなかったので、そのままお店に入ることに。

Elv og hav(淡水魚と海水魚のヴァリエーション。サケ、ザンダー、エビの3種)とLangefilet(ノルウェーの漁師さんオススメのお魚らしい)をオーダー。


めちゃくちゃおいしかった。
おさかなはもちろん、添えてあるクリームが絶品!
お店の雰囲気もすてきだし、これはおはなしも弾みます。

デザートも頼んでみた。Tilslørte Bondepiker。
リンゴのピュレ(ピュレというよりは角切りのような感じだったけれど)に生クリームとシナモンを添えて。

これもまたおいしい!生クリームがたっぷりかかっているのに、全然くどくない。
このさじ加減が、ノルウェー流なのでしょうか。


お店のスタッフも気さくで、とても気が利く。
うっかりナプキンを落としても、さっと新しいのを差し出してくれた。

ぐるっと店内を見回してみると、エドヴァルド・ムンク一色。ムンクの絵(のレプリカ)が、ずらり!
さすがにかの「叫び」はなかったけれど、以前日本で見た絵が何点か飾ってあった。鮮やかだけれど、どこか暗いものを背負った絵。黒く塗りつぶされた目が、じっとこちらを見つめる。

かつてドイツの眼科医(……だったよね)に「子どもの部屋に飾る絵を描いて」と依頼され、描いた絵があまりに暗過ぎて却下になった、というエピソードを思い出した。

ここに飾られているムンクの絵は、「暗さ」も「不気味さ」も多少は醸し出しているけれど、店内の落ち着いた雰囲気の邪魔はしていない。むしろ、いいアクセント。


なんとも居心地のよいレストラン!
機会があったら、また来たいなー。(お肉料理も気になるし)

そして一層、本場ノルウェーにも行きたくなった!

食べものがらみで一喜一憂した。


誰が悪いというわけでもなく、
単純に

「運が悪かった」

だけのはなしなのだけれど、
そこまでテンションが下がる自分に唖然。おまえいくつだ。

訳:メンザで食べるつもりだったKaiserschmorren(パンケーキの一種)、まさかのタイムオーバーで食べられなかった


「妥協するのはくやしい」

という謎の意地でしばらくおとなしくしていたけれど、結局カスタード・ドーナツを食べた。
おいしかったので元気になった。

更にPfannkuchen(Berliner!)をもらって、しまいには上機嫌に。


明日からもう少しオトナになろうと思います。


それにしてもPfannkuchenおいしかった……。

かれんだー

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YuN


ドイツ生まれ、ドイツ育ちの「なんとなく日本人」。根っからのラインラントっこ。

日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。

深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。

2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。

ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。


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