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ゆうゆう自適。

つらつら、まったり。つれづれ(不定期)雑記帳。海風薫るロストックから伯林、そして再び東京へ。再びドイツへ「帰る」日を夢見て、今日も今日とてしゅぎょう中。
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フランツ・カフカ著。邦訳『判決』、1912年。

後輩に借りた短編集。
短編集『田舎医者』に収録されていた短編がいくつかと『断食芸人』、長編(というよりは、中編かな)『判決』『変身』『流刑地にて』収録。

ストレートに言いましょう。短編はともかく、長編は読むとなんとなくいやーな気持ちになります。
どんなに理不尽な設定でも、何事もなかったかのように「普通に」ストーリーが展開されるのは、すごい。

ある朝起きたらいきなり虫になってたとか、
いきなり父親に死刑判決を言い渡されるとか、
朝起きたら謎の罪で逮捕されたりとか(最後のは『Der Prozess 審判』)。

短編は、アフォリズム的なものも多くて、すぐ「???」状態になってしまうけれど、読めば読むほど新しい「なにか」が発見できる。おもしろい。

短編は『Auf der Galerie』(邦題わからず)と『Ein Landarzt  田舎医者』、長編は『In der Strafkolonie 流刑地にて』が印象に残っています。作品研究の論文とセットで読むと、あれこれ考えるきっかけにもなります。「???」からひとりで抜け出すのは、なかなか難しいし、ね。

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吹田順助訳、1941年出版。

クライストのPenthesileaの翻訳です。
旧仮名遣いです。

タイトルが『アーレジテンペ』、最初なにか別の作品(Amphitryonとか)かと思った。左→右読みか。

最初、慣れるまでが大変でしたが(一部の漢字は最後まで読めなかった)、しばらくすると「高貴さ」とか「神々しさ」とか感じられるようになってくる……ような気がする。雰囲気出てる!


師匠に「旧仮名遣いが難しい」と話してみたら、「ぼくたちの若いときにはその文体を読むのが普通だった」と言われました。翻訳の雰囲気も、現代仮名遣いのものとはだいぶ違うと思います。……うーん、うまく読めないのがちょっと残念。

ハインリッヒ・フォン・クライスト著、1808年出版。

ギリシアの将軍アキレスと、アマゾネスの女王ペンテジレーア。
戦場で出会ったふたりは、恋におちる。

相手を打ち負かさない限り、愛を受け入れることができないふたり。
アキレスはペンテジレーアに改めて戦いを挑む。彼はあえて負けるつもりでいたが、彼への愛ゆえに暴走したペンテジレーアに殺されてしまう。
ペンテジレーアは、彼女が放った猟犬とともにアキレスのなきがらに食らいつく。やがて彼女は我にかえるも、己のしでかしたことに衝撃を受け、アキレスのあとを追う。


愛と掟のはざまで揺れるペンテジレーア、その悲痛な想い。
「狂気の物語」と称されることが多い作品だけれど、それだけではないなあ、というのがわたしの印象。

「食べてしまいたいほど、愛してる」

ふと、そんなことばが脳裏をよぎった。

ペンテジレーアはアキレスを愛していた。
でも、故郷の掟には逆らえなかった。
彼を打ち負かして自分のものにしなければならない、その想いが高じての暴走。

カニバリズム?タブー?狂気?
いいえ、それだけではないはず。


この倒錯した愛の物語に、しばし浸ってみるとします。

クリスタ・ヴォルフ著、1990年出版。
邦題『残るものはなにか』。

美博勤務の合間に読破。
ヴォルフの作品は長めのものが多いけれど、これは100ページとちょっと短め(しかもフォントも大きい)。

1979年3月、東ベルリン。
秘密警察に監視されている作家「わたし」の、とある一日。

秘密警察の存在によって脅かされ、壊される日常生活。
気にしないように努めるも、秘密警察の陰におびえる「わたし」。

ヴォルフの自伝的な作品として位置づけられる本作は、東西ドイツで文学論争を引き起こしたそうです。
1979年に起こった出来事を、なぜ統一後に発表したのか。東ドイツの知識人たちは、現実と戦う道は選ばなかったのか……。

ヴォルフの作品でよく見られる、自己との対話を織り交ぜたモノローグ形式は、読み手を引きつける「ちから」があると思う。
内容に関しては、『メデイア』の前身みたい、というのが率直な印象。「面白い!」というよりは「ふーん」といった感覚に近いかな。ことばは簡単だけれど、その分読み込む必要がありそう。


「祖国」に抱いていた幻想を打ち砕かれ、書くに至った『カッサンドラ』。
「声」を聞いてもらえず、「悪女」の烙印を押されたのちに手がけた『メデイア』。
その間に揺れる『残るものはなにか』。

1979年に書かれ、1989年に手直しされたこの作品は、『カッサンドラ』と『メデイア』の間をつなぐ橋のような役目を果たしているのかもしれない。


作品を読めば読むほど、視野が広がる気がする。
早く早く全集、来ないかな~。

クリスタ・ヴォルフ著、保坂一夫訳。
原題"Kein Ort. Nirgens"。1979年出版。

一緒に収録されているギュンデローデに関する論文はまだ読み終えていません。
これはドイツ語で先に読むか、それより先に翻訳に目を通すか……。


作家ハインリッヒ・フォン・クライストと詩人カロリーネ・フォン・ギュンデローデの架空の出会いを描いた作品。

詩人たちの集うお茶会。
己の生き方、信念を貫く一方で、社会に適応できないクライストとギュンデローデ。(クライストもギュンデローデも、史実では若くして自ら命を断っています)
そのふたりがともに過ごしたひととき。

これまで読んできたヴォルフ作品の中ではもっとも難解。
語り手・クライスト・ギュンデローデと、視点がくるくる変わります。何度か読み直さないとさっぱりわからない。
翻訳は読みやすく、自分が思い描いた登場人物のイメージにぴったり!と思えるものの、やはり難しい。(ドイツ語のテクストは翻訳に置き換えると絶対に難易度があがると思う)

めちゃくちゃ手ごわいけれど、この「移ろう語り」に惹かれるのも事実。
いつかじっくり分析してみたいなあ。


翻訳『どこにも居場所はない』を中断して、先に"Was bleibt"(邦題『残るものはなにか』)を読みます。東西ドイツで物議をかもしだした問題作!
その次に読みたいのはエウリピデス『メデイア』、クライスト『ペンテジレイア』。ギリシア神話と仲良くするぞ。

かれんだー

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ドイツ生まれ、ドイツ育ちの「なんとなく日本人」。根っからのラインラントっこ。

日本の大学院で現代ドイツ文学を勉強中。ただいま、ドイツにて「しゅっちょう」修行の旅の途中。今やすっかりメクレンブルクの空と大地と海に心を奪われています。
夢は、日本とドイツをつなぐ「ことばや」さんになること。

深刻になりすぎず、でも真剣に。
こつこつ、しっかり、マイペース。がんばりすぎない程度にがんばります。

2010年4月-9月までロストック(メクレンブルク・フォアポンメルン州)、10月-2011年3月までベルリンに滞在。再度ドイツに留学することが、今後の目標のひとつ。

ぽつぽつと、不定期的に過去の日記を埋めていきます。


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